問題は女性蔑視ではない。

森喜朗は確かに女性蔑視の老害ジジイだけれど。

森喜朗元東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の例の発言について、「女性蔑視である」という批判がなされているけれど、問題はそこではない気がします。
それもあるんだけれど、そこばかり叩くと、問題のかなりの部分を見落としてしまうかなと思っています。

問題は、森氏が「発言していいのは俺だけ、いろんな視点のいろんな意見なんて時間の無駄、そんなことは空気を読んで弁えて俺だけ立てていればいい」と思っているということです。
森氏にとって、面倒くさい反対意見や他の視点の意見などを議題に上げるような「弁えていない」のは女性が多かったというだけの話で、これが例えば男性であれば、たいていの男性が森氏よりは年下でしょうから「最近の若いもんは弁えていない」などと言い出すでしょう。
あるいは男女問わず、意見を言う人物が、日本式の「空気を読む」ことをしない「海外経験の豊富な人」が多かったりしたら、「外国かぶれの弁えないバカ者が多い」などと言い出すでしょう。

要するに、イエスマン(いやポリティカルコレクト的にいえばイエスパーソン)ばかり周りに置いているということです。ここが問題なのです。
実際、例の発言の後半には「私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます」と、組織委の女性は森氏のイエスウーマンであるかのように述べています。

あまりに「女性蔑視である」ことだけを叩くと、体質を変えずに「じゃあ女性を選べばいいんでしょ女性を選べば」ということになりかねません。
女性だからといって、同じような、イエスウーマンばかり選んでも何にもならないのです。
たとえトップを変えても、同じような「意見を圧殺するタイプ」が選ばれる可能性が高い。それは森氏のような年齢の男性でなくても、女性であってもその可能性はあるのです。その体質自体が問題なのです。

そんな風通しの悪い、ただ単に表面的な体裁だけの「委員会」なんてカネと時間の無駄でしかありません。
実際オリンピック委員会は、非常に風通しが悪く、男性は男性社会に飼いならされやすいので発言することがなく、女性の委員ばかりが発言していたそうです。
この記事では、以下のように述べられています。

JOC理事会の実情について、ある理事は「森さんの言っていることは、ある意味では本当」と指摘。「女性しか発言しない。特に山口(香)さん、小谷(実可子)さん、高橋(尚子)さんの3人は非常によく発言する。でも男性はほとんど発言しません」

世界の失言王・森喜朗会長「居直り」で浮き彫りになった「山下JOCの闇」

この「ある理事」の証言が本当であれば、東京オリンピック組織委員会とは、一部の勇気ある人物(ほぼ女性)だけしか意見を言わない、ただの大政翼賛会にしか過ぎないということです。
女性蔑視、よりも、こちらのほうが私は気になるのです。
どうか、「女性を登用すればいい」で終わらず、この体質自体が変えられることを心から祈っています。

ケチがつきどおしの東京オリンピック。

思い返せば、このオリンピック、当初からケチのつきどおしでした。

1.猪瀬知事の政治資金規正法違反。
2.とても実現不可能なデザインの新国立競技場。
3.ロゴマーク盗作疑惑。
4.都政を私物化して辞任した舛添知事。
5.チケットを売ってから「東京は暑いから一部競技を札幌へ」
6.新型コロナウィルスのパンデミック。
7.森喜朗オリンピック組織員会会長の女性蔑視発言。

新型コロナ以外は、すべて人間が引き起こしたことで、ふがいなさが目立ちます。
「適切な人物を選ぶ」「実現可能なプランを採択する」「前もって不都合がないかを検討する」といったことがすべて欠けています。
(夏の東京が異常に暑いことなんて当初からわかっていたことですし、ザハ・ハディド氏の建築プランにしても、識者が集まって検討したにしてはお粗末な結果です。実際に建てられるか費用が足りるかとか検討しなかったのでしょうか?)

そして誰もいなくなった。

それに、今になってまだ「今年のオリンピック開催は無理」と言わない組織委員会も、ダメダメです。
今、この瞬間に、世界中の新型コロナウィルス流行が一斉に収まるような奇跡が起こったとしても、半年を切って開催するなど無理だって、誰もがわかることでしょう。それを、IOCに忖度してそう言わない組織員会は、本当に無能の集まりだと思います。

今、開催すると言われても、半年で選手が調整できると思わないし、旅程を組むのだって難しいでしょう。
(むしろ、今のままでは、2022年2月開催予定の北京冬季オリンピックが開催できるかどうかすら怪しいぐらいです。先進国でワクチンがいきわたるのが今年の末ぐらいのようです。途上国ではわかったものではありません。そうなると2022年2月にオリンピック級の大規模イベントを行うのは厳しい気がします。)

むしろ、今議論すべきは、今年中止して来年開催するか、あるいは完全に中止してこれ以上の損害を出さないようにするか、どちらがよりよいかということではないかと考えています。
ここまで用意したものを、延期あるいは中止するのは、苦渋の決断で、関係各所に納得してもらうのも厳しいけれど、それができる委員会になってほしいと考えています。

スポンサーリンク





シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする